“風のがっこう”へどうぞ
 
S.R.Aデンマーク社 ケンジ・ステファン・スズキ
 
目次  
  1. 研修センター“風のがっこう”開設の背景
  2. 風力発電の導入に関する研修内容とその目的
  3. バイオガス装置とメタンガス利用に関する研修内容とその目的
  4. 廃棄物の処理と再利用に関する研修内容とその目的
  5. 環境教育と環境政策導入の背景に関する研修内容とその目的
  6. デンマークの風力発電の現状及び発展の背景
  7. 政府の取り組み
    研修センター“風のがっこう”の概略
 
1. 研修センター“風のがっこう”開設の背景
 
 デンマークは世界の国に先駈け、環境とエネルギー政策の中で特に、再生可能エネルギーの導入に力を入れている国です。当研修センター“風のがっこう”はこうしたデンマークが導入している、環境とエネルギー政策を他の国、例えば日本でも利用できるのではないか、という観点から、その導入に必要な要素・要因を見聞し、情報交換の場所として討議の場所があれば有益ではないか、ということから開設しました。  新聞等で紹介されたということもあり、開校早々の1997年夏、日本からの研修生が多数参加。スタッフも反響の大きさに驚きながら熱意を持って対応しました。多忙な中にもやりがいを感じる日々でした。そして多くの人に風力発電をより現実的なものとして促えていただければ、と思っています。
 
<研修センター“風のがっこう”の研修内容>
  a) 風力発電の導入に関する研修
  b) バイオガス装置とメタンガス利用に関する研修
  c) 廃棄物の処理と再利用に関する研修
  d) 環境教育と環境政策導入の背景に関する研修
 
2. 風力発電の導入に関する研修内容とその目的
 
 デンマークの風力発電は風力発電世界市場において、半分以上のシェア−を持っています。そこで、“風のがっこう”においては、デンマークの風力発電に関する、風力発電機の構造、歴史的背景、設置する際の手続きと法的根拠、発電量の算出方法、投資の経済計画、系統連系の問題と風力発電機の制御等について研修を行い、さらに風力発電機の共同所有の仕組み、売電価格の設定等についても研修項目の中に含んでいます。風力発電に関する研修は全日程6泊7日となっており、実用化されている最新の風力発電所の視察、風力発電機メーカー等の視察と研修センターでのレクチャーを組み合わせ、短い日程の中で風力発電機の導入に必要な基本的知識を習得する事を目的にしています。
 
3. バイオガス装置とメタンガス利用に関する研修内容とその目的
 
 この研修では、家畜の糞尿と有機廃棄物からメタンガスを収集するバイオガス装置と最終廃棄処分場に発生するメタンガスを利用する装置について研修します。前者は、デンマークの酪農場から出る膨大な家畜の液肥と産業や家庭から排出される有機廃棄物からメタンガスを収集し、そのガスをコージェネレーション(CHP)の燃料として使用する装置です。その装置の設置条件と仕組み、構造、経済計算等について、実際のバイオガス装置を視察し、さらに研修センターでのレクチャーを通じて導入するための方針について学ぶ事が出来ます。後者は、廃棄物の最終処分場に投棄したゴミの中からメタンガスを収集し、そのメタンガスを発電と熱供給の燃料に使用している装置について研修します。デンマークにはこの分野においても優れた技術を持っており、特に膨大な廃棄物を投棄する日本においても、この装置は利用できると見るためです。
 
4. 廃棄物の処理と再利用に関する研修内容とその目的
 
 デンマークエネルギー省が発表した1996年における廃棄物の総量は、約1,290万トン、人口一人当たりに換算すると約2.5トンとなっています。(注)この廃棄物のうち60%がリサイクルされています。デンマークには廃棄物を燃料とした分散型コ−ジェネレーション施設が数多くありますが、この装置を視察しその特徴からゴミ発電及び熱供給に関する社会的メリットについて学び、廃棄物を燃料原として促えているデンマークの例を日本でも数多く取り入れる事は出来ないか、という視点に基づき研修します。 (注)廃棄物内訳:一般家庭の廃棄物25%、産業廃棄物51%、発電所及び汚水処理場からの廃棄物24%
 
5. 環境教育と環境政策導入の背景に関する研修内容とその目的
 
 この研修では、デンマークの環境政策とは何か、その背景とデンマークが導入している環境保護の目的及び手段について学び、これを通してどこの国でも同じような制度が導入出来る事を確認する事を目標にしています。
 
6. デンマークの風力発電の現状及び発展の背景
 
 デンマークには1998年末において合計5,247台の風力発電機が稼動しその合計出力は1,420,000kW(1,420MW)となっています。風力発電所の所有者別では、個人及び民間が約85%を占めており、残る15%が電力会社所有となっています。また1999年6月現在における風力発電による発電量は約32億kWhに達し、デンマークの全電器消費量に占める風力発電の貢献率は、約10%にあたります。1998年における風力発電に関する統計では、デンマークの風力発電メーカーは、1年間で1,215MW、合計1,742基の風力発電機を生産しました。(1基当たりの平均出力は約698kW)この内、国内販売は約315MW、輸出約900MWで、この輸出額は約52億クローネ(約1000億円)となっています。デンマークの風力発電機は日本にも輸出されており、1980年から1999年6月までの間に合計47基の風力発電機が日本に輸出されています。また、デンマークにおいて風力発電産業に従事する労働人口は約12,000人となっています。
 
7. 政府の取り組み
 
 現在デンマークの風力発電が伸びている背景には、1973年から74年にかけて起きた石油の供給危機問題があります。当時、デンマークのエネルギー消費量の90%は輸入した石油に依存していました。この石油危機を境にデンマークの火力発電所はその燃料を石油から安価な石炭に切り替え始めました。デンマーク議会はこの石油危機の経験から、1976年に入ってエネルギーの分散化を通しOPEC諸国の石油依存を減らし、エネルギーの安定供給を図る事を目的とした“デンマークエネルギー政策1976年”を立案しました。この政策案では、例えば北海油田の開発をもとにした石油と天然ガスの利用、補助金制度の導入による住宅の省エネ奨励等が組み込まれていました。そして1979年の第二次石油危機の経験からデンマーク議会は“エネルギー政策1981年”を立案しました。このエネルギー政策の中に自然エネルギー、特に風力発電の設置に重点を置き、その促進を図るため1979年、デンマーク政府は風力発電の建設に補助金を出す政策を導入しました。補助金制度は当初、風力発電所の設備額の30%まで支給されました。
 
 この補助金はその後引き下げられ、1989年に廃止されましたが、この補助金の導入によりデンマークの風力発電設備は著しい伸びを示しました。  また、1985年に入り、デンマーク政府は電力業界との間に風力発電100MW (10万kW)の建設計画を結びました。この計画では、電力業界は1986年から1990年までの5年間に100MWの風力発電所を自社の発電設備の中に設置するという事に合意しました。この計画は“風力発電1985年計画”と呼ばれています。そして1991年1月、デンマークの環境省とエネルギー省の協議の結果として、“風力発電設置場所審議会”が発足しました。審議会のメンバーは、計画庁、エネルギー省、環境省、農林省、森林及び自然監督庁、地方自治体、電力業界、農林共同組合、風力発電製造者協会、そして自然保護関係団体の代表者15名となっていました。審議会の課題は、電力業界が所有する風力発電設備をさらに100MW 増設させるため、その具体的方策について提案する事でした。この計画は、“風力発電1990年計画”と呼ばれ、デンマーク全国の電力業界に対し、風力発電に適した場所を探し、その場所に風力発電の増設を割り当てる事、となっていました。この2度にわたる風力発電の建設計画によって、数多くのウィンドファームが誕生しました。例えば、24MW(600kw×40基)のウィンドファーム、12.6MW(300kW×42基)のウィンドファーム等がこの計画の成果となっています。また、デンマーク政府は、地球の持続可能な発展を目標にした“ボントランドレポート(Brundtland)”の勧告を取り入れ、1988年12月環境と発展に関する行動計画を議会に提出しました。この行動計画はその後、1990年4月“国連の気候協定”の批准という議題となってデンマーク議会を通過しました。これが、通称“エネルギー計画2000”と呼ばれています。この行動計画の中から、特に風力発電との関係を見ますと、デンマーク議会は地球の温暖化の原因となっている二酸化炭素の排出量を西暦2000年までに1988年の水準に比べて20%削減する目標を立て、この目標を達成するためには、石炭を燃料とする火力発電を減らし、再生可能エネルギーの発電施設を増設する事、となっています。そして、再生可能エネルギーの中で最も効率が良い風力発電設備を西暦2005年までにデンマーク全電力消費量の10%に当たる1500MWまで増設する事を同“エネルギー計画2000”の行動計画の中に組み入れました。ちなみにこの10%という目標は、1999年の段階で既に達成しています。  この計画を遂行するため、デンマーク議会は1995年6月13日にグリーン税に関する法案を採択しました。このグリーン税の中には炭素税も含まれていて、炭素税額は1キロワット時当たりの電力消費量に対し、0.1クローネ(約2円)課する事になりました。この炭素税は、100%目的税となっており、風力発電、バイオガス発電等、二酸化炭素を排出しない発電への売電価格の補助金として利用されています。  このように、デンマーク政府の風力発電建設政策は、設備投資への補助政策を通し、その後の売電価格への補助政策も加わり、デンマーク国内に多くの風力発電所を生み出しています。そして現在、デンマーク政府の風力発電建設政策は、設備投資への補助政策、さらにその後の売電価格への補助政策を通じ、デンマーク国内に多くの風力発電所を生み出しています。そして現在、デンマーク政府は、風力発電所の大幅な増設を計るため、デンマークの沿岸地域4ヶ所に西暦2030年までに合計4,000MWの洋上ウィンドファームを建設する計画を立て、電力消費量の50%を風力発電で賄う計画を実行しています。この計画によれば、既に商業化に入った1基当たり1,500kWの風力発電機を沿岸から3〜5km離れた洋上に、西暦2001年から毎年80〜100基建設する、となっています。
 
研修センター“風のがっこう”の概略
 
所在地:デンマーク、ユトランド半島北西部
  住所
  E-mailアドレス:sra-dk@post.tele.dk
   
開設年月:1997年6月
 
施設の内容:
  ・土地の面積 約6ヘクタール
  ・研修センター用建物 1棟 延面積 約490F
  ・多目的用建物 1棟 面積 約500F
  ・その他の建物 2棟 面積 約270F
  ・宿泊施設の定員 15名
   
 

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